コウモリ

コウモリが反響定位(エコロケーション)という能力を持っているから夜に活動しているという説は誤謬というより逆説であり、その能力は進化の過程で視力よりも遥かに後に獲得したものであることは間違いない。つまり反響定位があるから夜に活動しているのではなく、暗闇という環境に適応するために手に入れた能力であると思われる。

ではなぜコウモリは眼が利く日中ではなく、わざわざ超音波を発しながら反響定位を利用して夜に活動を行うようになったのか。

それは昼の空には鳥という強大な支配者がいたからである。





始祖鳥と呼ばれるアーケオプテリクス(Archaeopteryx)の化石はジュラ紀後期約1億4500万年前の地層から発見されている。ジュラ紀後期に発生した鳥類は、白亜紀にはすでに多様性が減衰しつつあった翼竜を圧倒し、空を自分達のものとしていた。

始祖鳥の化石
始祖鳥の化石


一方で現在確認されている最古かつ原始的なコウモリは始新世初期(約5250万年前)の地層から発見されたオニコニクテリス(Onychonycteris)であり、この種の出現はアーケオプテリクスの出現から約9250万年遅れている。
つまり原始的なコウモリがようやくこの世に現れた時には、鳥類は既に高い飛行能力と視力を獲得していた上、種も多様化しており、後発の飛行する脊椎動物の台頭を許さないほどに確固とした生態系での地位を確立していたと考えられる。
ちなみにこのオニコニクテリスは蝸牛や槌骨の突起が小さいことなど化石から判明した形態的な理由から現存するほとんどのコウモリの仲間が持つ反響定位の能力が欠如していたとみられ、このことはコウモリの進化において飛翔が先行し次いで反響定位を獲得したことを示している。
コニオニクテリス
オニコニクテリスのイラストはまるで翼を持ったネズミ



中生代の終結において、翼竜は絶滅し鳥類も現生の鳥類に繋がる新鳥類以外の系統が途絶えた。これにより、飛行する脊椎動物という生態系ニッチに幾分が空きができ、コウモリ類はここに進出する形で哺乳類から進化した、というのが現状での結論である。

コウモリ類の祖先は哺乳類ではじめて高度な飛翔能力を獲得したが空には更に高度に進化した生物が既に存在した、9250万年という歳月の優位性は大きく同じ土俵での競争では勝ち目がない。そこでコウモリは鳥類の存在しない暗闇の空へと追いやられ(能動的な表現を使うならば、進出し)自らの形態と生態をその環境に適応させたのだと考えられる。反響定位という特殊な能力はこういった進化の過程で獲得したものだろう。

オニコニクテリスは前肢の指全てに爪を持ち、また現生群に比べて前肢が短く後肢が長いなど祖先的な特徴を持っており、この四肢の長さの比率は、現生群とテナガザルなどの前肢を主に使用して樹上を移動する哺乳類との中間であるという。この事から、コウモリの祖先は樹上性の哺乳類であったのではないかと推定される。

コウモリの祖先に近い生態をしている樹上性の飛膜を広げて滑空を行う哺乳動物には、ムササビ、モモンガ、ヒヨケザルなどが知られているが、皆一様に夜行性である。このことからオニコニクテリスとその祖先も同じく夜行性であった可能性が高いこと、空中を移動する哺乳類は夜に活動した方が生存率が高かったことが考えられる。
ムササビ
夜間に活動するムササビ






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