クワガタムシの幼虫の餌は、木材が腐朽した朽木などの腐植質ですが、その食性は種によって異なり、次の4タイプに分類することができます。





①白色腐朽材食



オオクワガタ属(Dorcus)、ノコギリクワガタ属(Prosopocoilus)、フタマタクワガタ属(Hexarthrius)、シカクワガタ属(Raetulus)、ニセシカクワガタ属(Pseudorhaetus)、ベトナムシカクワガタ属(Weinreichius)、マキシカクワガタ属(Yumikoi)、オオシカクワガタ属(Raetus)、ニジイロクワガタ属(Phalacrognathus)、キンイロクワガタ属(Lamprima)、オオツヤクワガタ属(Mesotopus)、メンガタクワガタ属(Homoderus)、オニクワガタ属(Prismognathus)、等

白色腐朽材を食べる種は比較的新しく現れたものが多く、最も資源量が多いタイプの朽木を餌としており、地球上で最も反映しているグループです。キンイロクワガタ属は古い型のクワガタムシですが、例外として白色腐朽菌を消化吸収できる性質を獲得しています。
クワガタムシの飼育で主要な対象種になっているものはこれに含まれるものが多いです。所謂菌糸ビンで幼虫を飼育できるタクソンになります。
これに含まれる種は野生化では白色腐朽菌が繁殖した朽木に好んで産卵を行いますが、以下に記載している褐色腐朽材でも問題なく育成することが可能です。


白色腐朽菌について
木材中のリグニンを分解する能力を持ち、リグニンが分解された後に残留するセルロース、ヘミセルロースの色である白色に変色することから白色腐朽菌と呼ばれる。セルロースとリグニンを分解する非選択的白色腐朽菌とセルロースはあまり分解せずリグニンを優先的に分解する選択的白色腐朽菌に分けられる。褐色腐朽菌や軟腐朽菌に比べ寒さや直射日光に強く、乾燥の繰り返しの激しいところや寒暖差の大きなところなど環境の変化が激しいところでも育成するものが多い。広葉樹を好んで腐朽させるものが多い。地球上唯一木材を完全分解できる生物で、リグニン分解能力を獲得したのは古生代石炭紀末期頃であると分子時計から推定された。石炭紀からペルム記にかけて起こった有機炭素貯蔵量の急激な減少は白色腐朽菌のリグニン分解能力の獲得によるものと考えられる。
例:シイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、スギヒラタケ、マイタケ、タモギタケ、スエヒロタケ、カワラタケ、シュタケ、ホシゲタケ、ヒイロタケ、等


ヒラタケ
ヒラタケ

カワラタケ
カワラタケ


②褐色腐朽材食



一部のツヤクワガタ属(Odontolabis)、オウゴンオニクワガタ属(Allotopus)、マダラクワガタ属(Aesalus)、等

褐色腐朽材食のクワガタムシはマダラクワガタ属など古い型のクワガタムシが多いです。ツヤクワガタ属は基本は軟腐朽材食ですが、一部の飼育困難な種は褐色腐朽材のフレークを用いてブリードされます。ツヤクワガタ属はマダラクワガタ属と同じく古い型のクワガタで、ノコギリクワガタやオオクワガタなどの祖先型にあたると考えられています。
オウゴンオニクワガタ属は白色腐朽材は消化吸収が可能なオニクワガタ属とは食性が異なります。幼虫の餌が長年の間何なのか分かっていませんでしたが、日本のブリーダーにより褐色腐朽菌の一種であるマンネンタケの菌糸が繁殖した木材(霊芝材)による飼育が確立されました。
白色腐朽材食のクワガタムシの幼虫が褐色腐朽材も問題なく食物にできるのに対し、褐色腐朽材のクワガタムシの幼虫は白色腐朽材から栄養を摂取する生理的能力を持たないことが知られています。


褐色腐朽菌について
褐色腐朽菌は木材中のセルロースやヘミセルロースを選択的に分解する能力を持ち、それらが分解された後に残留するリグニンの色である褐色に変色させることから、褐色腐朽菌と呼ばれる。担子菌であり、多湿、風通しや日当たりの悪いところを好む。
針葉樹を好んで腐朽させるものが多い。
例:オオウズラタケ、サルノコシカケ、マンネンタケ、ナミダタケ、マツオウジ、チョークアナタケ、キカイガラタケ、イチョウタケ、イドタケ、等


マンネンタケ
マンネンタケ

サルノコシカケ
サルノコシカケ



③軟腐朽材食(腐葉土、腐植土含む)



ミヤマクワガタ属(Lucanus)、ツヤクワガタ属(Odontolabis)、マルバネクワガタ属(Neolucanus)、ホソアカクワガタ属(Cyclommatus)、オオズクワガタ属(Macrocrates)、等

軟腐朽材食のクワガタムシの幼虫は腐植質を多く含む土中に生息しています。
成虫は水分の多い土中の朽木やその付近に産卵することが多く、メスの産卵場所や幼虫の食性がカブトムシと重なる種もいるようです。


軟腐朽菌について
木材含水率100%以上の木材を好み、白色腐朽菌や褐色腐朽菌が腐朽できないような高含水率の木材の表面に軟化現象を起こさせるものを軟腐朽菌といい、ケトミウムやトリコデルマなどの子嚢菌や不完全菌の仲間である。アルカリや高温に強いと言われる。
主として、ヘミセルロースを分解して栄養源とするが、リグニンやセルロースを分解するものもある。分解力は弱く、菌糸体の近傍のみが分解が進み、軟腐朽菌による腐朽を受けた木材はどす黒く焦げたように見え、表面は柔らかく変化する。その後、乾燥すると多数のひび割れを生じ、それが脱落することで、木材内部の腐朽が進む。
ミミズやバクテリアなどの土壌生物によってさらに分解が進んだものを腐葉土もしくは腐植土と呼び、ここまで分解されたものを好んで食すクワガタムシもいる。




④シロアリによって生成された腐植食



ネブトクワガタ属(Aegus)、等

ネブトクワガタ属の幼虫は朽木を摂食したシロアリが出す窒素化合物などの栄養が濃縮された土状の排泄物を食べます。野生化の成虫はシロアリによって腐食された朽ちた松などに産卵していますが、
決してシロアリの排泄物からしか栄養を摂取できないというわけではなく、シロアリ以外のクワガタムシやカミキリムシなどの朽木を食物とする幼虫の糞や、市販されている発酵マットなども食べます。飼育下では黒土に近いようなかなり発酵が進んだマットに多めに加水してあげたもので飼育するのがいいようです。
ネブトクワガタに関して詳しくはこちらの記事に書いていますので、ご興味のある方はお読み下さい。ドルクス属ではないが魅力的なクワガタ、ネブトクワガタを飼育してみよう







種による食性の違いを知ることで気づいたこと



広葉樹よりも原始的な植物である針葉樹の朽木を腐植する古い菌類である褐色腐朽菌には同じく古い型であるマダラクワガタ属やツヤクワガタ属が産卵し餌とし、比較的新しい植物である広葉樹はリグニンを分解できる新しい菌類である白色腐朽菌が腐植し、それを栄養とすることができるオオクワガタ属などの新しい種のクワガタムシが産卵し餌とする。
知ったあとで考えてみると当たり前のことですが、調べみて初めて気づく発見があり、非常に興味深いです。
このように食性によってクワガタムシを分類していくと、個人が趣味で繁殖しているような種は全てのクワガタムシ科(Lucanidae)の一部であることに気づかされます。
昆虫専門ショップ等では、非常に多くの種が流通しており世界中のクワガタムシを見ることができますが、このようにネットやお店で手に入れられるような種類を全て合わせたとしても、恐らくクワガタムシ科に分類されている種の40%にも満たないでしょう。そしてそのほとんどが白色腐朽材食の種です。
クワガタムシ科の成虫はほとんどが樹液食ですが、チビクワガタ属やヒョウタンクワガタ属など肉食の種も存在していたりと食性の面からクワガタを見て分類してみるのも大変面白いと感じました。
また、種による食性を知ることにより、より健康的で大型の個体を作出することに役立つと思っています。






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